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  • ジュニア期のトレーニング

トレーニング指導者とは

『対象や目的に応じた科学的根拠に基づく適切な身体運動トレーニングプログラムを作成し、これらを効果的に指導・運営するための知識と技能を持つ専門家』とされています。

ジュニア期(6〜14歳)における筋トレのメリット

小さい時に筋トレをすると身長が伸びないなどと言われる事がありますが、NSCA、米国小児科学会では、「適切なプログラムを作成できる能力をもつ指導者が、すべてのトレーニングセッションを現場監督し、適切なテクニックでの実践を指導するのであれば、ジュニア期の筋力トレーニングは安全で効果的である」としています。
上記の条件を満たした結果、ようやく以下のトレーニング効果を期待する事が出来ます。適切に行っているつもりではなく、冒頭にも明記されている、科学的な根拠に基づく適切な指導がとても重要です。
ジュニア期(特に小学生時)に特定のスポーツに固執することは、初期段階に発生するケガの持続リスクが上がる可能性があるとされ、推奨されていません。ジャンルの偏りや過度な練習を避け、バランスの良いスポーツ活動が推奨されています。

オーバートレーニングに関する国際的研究結果

・Ohta-Fukushima 他(2002年)
疲労骨折で来院したアスリートのうち、71.3%が、週6日以上のスポーツ活動を行なっていた
・Loud他(2005年)
週16時間以上の活動をしいている女子は、週16時間未満の女子に比べ、疲労骨折の罹患率が2倍であった
・Rose他(2008年)
スポーツ活動時間が長いほどスポーツ外傷・障害の発生率が高く、特に週16時間以上でより高くなるという事が示された
・Jayanthi他(2015年)
1週間あたりのスポーツ活動時間が、【年齢×1時間】より多い場合には、スポーツ外傷・障害、重篤なスポーツ障害が発生する可能性が高かった

ジュニア期のスポーツ外傷・障害

外傷による怪我は避けがたいものですが、予防策としては外力を逃がす身のこなしを身につけること、予期せぬ外力に対して耐えうる身体づくりをするということです。身体づくりに関しては、障害予防に関しても言えることだと思います。
今回は上記の外傷ではなく、蓄積から起こる障害についてお話ししていきたいと思います。

発生要因

上記赤字の部分に関しては、選手への適切かつ専門的な指導が必要です。 そのポイントは、以下の4点です。
1.疲労に打ち勝つ身体づくり
2.ウォーミングアップによる発生要素の軽減
3.クールダウン、栄養補給など早い段階での疲労除去と蓄積回避
4.リカバリー(回復)/リジェネレーション(再生)の時間を設ける

ジュニア期の身体発達の特徴

ジュニア期の骨、筋を含む一般型の発達は、成人を100%として40〜60%程度です。この期間に過度な負荷をかけた無理なトレーニングは、スポーツ外傷・障害の発生リスクを格段に上げる要因となります。
成長速度(PHV)は女子は10歳頃から、男子は12歳頃から急速に加速します。 未発達の筋・骨格の状態に加え、成長速度の急加速は身体バランスの崩れを助長します。
発育期の骨端には骨端軟骨(成長軟骨)といわれる骨の成長に関する軟骨が集まっています。骨端軟骨の成長は、成長ホルモンによって促され発育が終了する20歳頃には、この軟骨細胞は石灰化し、骨の成長は止まります。
この軟骨細胞は一般的な靱帯とは組織的に異なり、血管や神経、リンパ管などがなく、強いストレスなどにより損傷した場合、修復は難しいとされています。 その為、この時期の過剰なトレーニングや、誤った姿勢・動作・トレーニングによる骨端軟骨部の損傷は、骨の成長の妨げとなります。

適切なトレーニングとは?

トレーニングを行う上で、トレーニングの原理・原則を理解されていますでしょうか?
原理とは、事物・事象において守らなければならない決まり。
原則とは、多くの場合に共通に適用される基本的な決まり。
つまり、トレーニングを指導するにあたって理解し、守らなければならない、守るべき事です。

トレーニング4原理

トレーニング5原則

ジュニア期の発育・発達に適した筋力トレーニングとは

  • NSCAの合意声明によると…
    ・有資格指導者(知識と経験豊富な)による現場監督指導を提供する
    ・安全な環境づくりを確実に行う
    ・各セッションの最初に5〜10分のダイナミックウォーミングアップを実施する
    ・常に正しい動作テクニックに焦点をあて、比較的軽めの負荷から始める
    バラエティ豊富な上半身・下半身の自重系ストレングス種目を各1〜3セット&6〜15回ずつ実施する
    体幹部周辺を強化する種目を含める
    ・左右バランスよく筋力を強化し、関節周辺の筋バランスを適切に整えることに焦点を当てる
    バラエティ豊富な上半身・下半身の自重系パワー種目を各1〜3セット&3〜6回ずつ実施する
    ・ニーズ、目標、能力に応じて慎重にトレーニングプログラムを漸進させる
    ・ストレングスレベルが改善するにつれて5〜10%程度で強度を緩やかに上げていく
    ・提供度の自重系や静的ストレットなどを中心としたクールダウンで締める
    ・毎セッションを通じて、各対象者のニーズや考え(感じていること)に耳を傾ける
    連続しない形で、週に2〜3回程度のレジスタンストレーニングから始める
    ・進捗を把握するため、個別の記録をつける
    ・体系的にトレーニングプログラムを変化させることで、プログラムを新鮮で挑戦しがいのあるものに保つ
    ・身体に良い食事、適切な水分補給、十分な睡眠を確保して、パフォーマンスとリカバリーを最適化する
    ・指導者と親御さんによるサポートと励ましは、高い関心を維持する助けとなる

  • 上記17項目が提示されています。
同時理論でのトレーニングではなく、スポーツの原理原則を踏まえ、上記項目に沿った上で行われる独自トレーニングメニューを組み、ジュニア期の成長サポートを一緒に実践していきましょう。

CKCエクササイズ

トレーニングの導入として、自体重を用いたCKCエクササイズを活用してみてください。 四肢の強化に加え、体幹の強化や動的安定性(Dynamic Stability)の改善を期待でき、その後の本格的なトレーニングへのベース作りができます。
CKCトレーニング例
プッシュアップ
懸垂
クランチ
スクワット
ステップアップ
ランジウォーク
バックエクステンション

まとめ(要点項目)

・最大筋力での挙上や、オーバーヘッド種目を最適な指導、段階的なプロセスを踏むことなしに展開すると、骨端線を傷つける可能性がある
・筋力トレーニングに関係する障害の40〜70%は、いわゆる筋挫傷系のもので、特に腰背部周辺で起こりやすい
・安全なプログラムを構築し、適切な監督指導を徹底する
選手:指導者=10:1(目安)※NSCAガイドライン
・選手の理解度や習熟度合いを考慮する
・メインのセッションだけでなく、その前後のウォームアップやクールダウンにもしっかりと目を注ぐ
・荷重する場合、上半身で5%、下半身で10%以上の急激な負荷の増量はしない
・楽しく、やる気が湧くようなプログラム作りを心がける