顔面神経麻痺
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原因不明も多い?
病気やケガなど、何らかの原因によって顔面神経が傷害された状態です。
もともとは原因不明の顔面神経麻痺をベル麻痺、水痘・帯状疱疹ウイルスによるものをラムゼイハント(Ramsay Hunt)症候群と呼んでいました。しかし近年、ベル麻痺の主な発症原因は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の再活性化による神経炎と考えられは原因不明なものが減少しています。ベル麻痺のその他の発症原因には以下のようなことが関わっていると考えられています。
- 細菌感染
- 外傷・骨・腫瘍による神経圧迫
- 寒さによる神経への血流不善
- ストレス・飲酒・疲労
統計的には、年間人口10万人あたり50人が発症すると言われています。性差はなく、ベル麻痺は50代に多く、ラムゼイハント症候群は20代と50代に好発します。
症状
ベル麻痺 | ラムゼイハント症候群 | |
---|---|---|
顔面神経麻痺 (末梢性) |
・突然、片側顔面の閉眼不可(兎眼) ・額のしわ寄せ不可 ・口角が下がる、食べ物がこぼれる、鼻唇溝消失(一側顔面上・下部) ・耳介・顔面の疼痛や痺れ、味覚低下(舌前2/3) ・聴覚過敏 ・涙腺・唾液腺の分泌低下 |
|
内耳神経障害 | 同側の耳鳴り、難聴、めまい、眼振 | |
帯状疱疹症状 | 一側の耳介、外耳道、鼓膜、口腔粘膜に有痛性水疱 | |
※無疱疹帯状疱疹の場合、ベル麻痺と診断されることもあるため注意が必要 |
障害部位別の分類
顔面神経麻痺の障害部位は以下の2つに分けられます。
症状
中枢性 | 末梢性 | ||
---|---|---|---|
麻痺発症部位 | 病変反対側下部 | 障害部位と同側上下 | |
上部 | 額のしわ寄せ | 可 | 不可(麻痺側) |
閉眼 | 可 or 不可(筋により異なる) | ||
下部 | 鼻唇溝 | 浅くなる | |
口角上げる | 不可 |
原因
…脳梗塞など。診断
中枢性か末梢性の鑑別には、額のしわ寄せ可能か否かがとても重要です。また、耳の発疹や発赤を調べることで、診断の助けとなる場合もあります。
評価法
顔面神経麻痺の運動評価法には検査者が診て判断する主観的評価法と写真やビデオ画像、コンピューター解析で行う客観的評価法があります。
主観的評価法には、
1.柳原法(40点法):顔面各部位の動きを評価し、麻痺の程度を評価する
最悪時のスコアが10点以上の不全麻痺例で予後良好、8点以下で予後不良とされています。また、高齢者ほど予後不良となりやすく、36点以上で治癒と判定されます。
2.House-Brackmann法:顔面全体の表情運動を概括的に捉えて評価する
3.Sunnybrook 法:麻痺回復後の後遺症評価に重点
一般的治療
顔面神経麻痺の明らかな原因がある場合には、原因となる病気の治療が優先的に行われます。基本的には保存的治療が行われますが、時期によって使用する薬剤が異なります。
急性期(薬剤+保存的治療)
副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン) | 神経炎症、浮腫の改善 | |
抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル) | ウイルスの増殖抑制 | |
ビタミンB製剤 | 神経の再生促進 |
リハビリ・ケア
随意(自分の意思で動かせる)収縮
なし:アイケア(乾燥対策・閉眼誘導など)、表情筋マッサージ
あり:筋力強化、筋の協調性運動、病的共同運動・拘縮の改善
保存的治療に反応せず、麻痺が高度
顔面神経麻痺の後遺症
メディカルジャパン東洋医学的アプローチ
血流改善により顔面筋の萎縮を防ぎ、神経機能の回復、促進【処方例】
顔面部:陽白、四白、地倉(ちそう)、翳風(えいふう)
頸部:天柱
※ ラムゼイハント症候群の場合、痛みを伴うことも多いためお灸での治療をメインとする場合もあります。
東洋医学的な見立てでは、風寒の邪気が侵襲することによって発症すると考えられています。 さらに、邪気の侵襲場所(状況)に応じて処方穴も変更していきます。
関連情報
学会認定の「顔面神経麻痺相談医」「顔面神経麻痺リハビリテーション指導士」のテキストとして治療の標準化を目指し、また、顔面神経麻痺研究を志す医療者にとっても、治療の確立と不足点を明確化した教科書となっています。顔面神経麻痺の患者が全国どこでも質の高い医療を受けるためのガイドラインとなることを祈念しています。
参考文献
病気が見えるvol.7、脳・神経、顔面神経麻痺、P248、株式会社メディックメディア